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GRACEWINE

100周年を迎えて

ユーラシア大陸の東に位置する日本列島には、個性ゆたかな島国文化が根付いています。150年前鎖国を解いて間もなくワイン造りも始まりました。古くから栽培されていたブドウである甲州がワインとなりました。日本列島の中部、富士山も所在する山梨県が日本ワイン産業の発祥の地です。
グレイスワインは山梨県勝沼町で100年前の1923年9月に高祖父の三澤長太郎によって始められました。この年の9月1日は、関東大震災と称される東京、神奈川さらに山梨などを被災地とする大地震が発生しています。社会的な大打撃の真最中に、人々の明日を切り拓く願いを込めて、グレイスワインは出立したのです。
この精神は、4代目の現当主である父にも受け継がれ、2011年に発生した東日本大震災の中心被災地となった福島県の人々が、地域おこしのためにワイン造りを目指した時、先達として栽培・醸造・流通のすべてに亘って協力を行い、地域社会の日常の回復に寄与しています。

2005年に、グレイスワインは日本ワインとして史上初めて、対EU本格輸出の扉を開いています。グレイスの際立つ個性のひとつが、時流に流されることなく日本の伝統的なモノづくりを貫くという哲学です。
ワインの真髄を熟成の美味しさとしてとらえ、醸造のテクニックよりもブドウの力や風土の味わいを大切にします。果てしなく美しい日本の自然をワインに包み込む。日照量・標高・排水性・風通しを大切にして選ばれた畑からは美しい日本の山容がパノラマのように広がり、そこでは気象と交流しながら丁寧な作業が重ねられます。
自然を尊び、礼儀や習わしによってユネスコの無形文化遺産に登録された和食文化とも連なって、世界が受け入れた日本文化として日本ワインの英国・欧州など海外輸出への道を先駆的に拓いてきました。そこには、故郷山梨に伝えられてきた白ワイン「甲州」と歩む家族の強い覚悟がありました。
 
多くの皆様のお支えがあり、わたくしどもは本年創始100周年を迎えます。
ここに心からの感謝を申し上げます。

中央葡萄酒株式会社 取締役三澤彩奈